:ホストパロ
AM.05:45
5時に閉店してから片付けて売上集計して私服に着替えて、スタッフ用の裏口の靴箱にまだ一足残ってるのに気が付いた。
そうや、あいつ途中で眠いて言うたから奥の仮眠ベッドで寝さしたんやっけ。
しゃーなし、履いた片足を脱いで部屋へ向かった。
「千歳ー起きや。閉めんで、ここ」
真っ暗やったやろう部屋に俺が開けた扉から光が差し込んで、それに眩しそうに眉を動かした。
「んー…後2時間」
「おーい桁おかしないか、それ」
ほんまこいつ自由人やなフリーダムやな幸せやな。
「ほら、さっさと起きて帰る用意し。俺やって早よ帰って寝たいんや。硬い布団ちゃんが俺の帰りを待ってんねや」
ちゃらけて言うてみても無反応。
眠いん分かるけど、虚しなるからやめてや、それ。
と思ったらもにょもにょと寝言のように呟いた。
「…そげならここでいっしょにねればよか」
「は、」
言葉に気を取られて突っ立っとったらいきなり手首掴まれて、引きずり込まれたinベッド。
「え、ま待てや千歳!はーなーせーこの馬鹿力!」
叫んでみるも、むぞらしかーとかぶつぶつ呟きつつ腰に長い腕を絡ませて抱き締めてきた。
ト●ロかなんかと勘違いしとんのちゃうか、ちゅーかいたたたたた力加減考えろ!
-眠れる部屋の妖精-
(あれ、オサムちゃん、どないしたん。顔死んでんで)
(…ちょっと妖精と戯れとったんや。夜通し)
(…俺らん場合、日中の方が正しない?)
カンカン、とアルミ製の錆びた階段を重い足取りで上る。
(レポートぐらい実験やったその日に書けちゅーねん)
じゃらじゃらとやたら多い鍵の束をポケットから探りだしながら廊下を歩いとって、ふとハンバーグの旨そうな匂いがした。
新婚さんのお隣さんかいな?ええなあ飯作って待っとってくれる嫁さんおるて、と思った後、俺もそろそろ世間一般的には所帯もってなあかん頃なんかな、と妙に面倒くさい気分になった。
(ええやんけ。そもそも教師なんちゅー職業が悪いんや。どんだけ出逢いやら相手やら、ないと思ってんねや。オバンばっかやっちゅーねん。…かといって女生徒に手出したら嫁さんどころやないわな)
と、悪態ついて言い訳してみたりした。…誰に対してかは知らんけど。
はあー…情けな、と呟きつつ自分の部屋の鍵穴に突っ込んで回した。
…おかしい。こんな軽いはずあらへん。
ノブに手を掛け回してみたら、あっさり開いた鉛色の扉。
ちょ、待てや。なんも無いで。取って得するようなもんなんも無いで…!!
けど本棚と布団の下だけは勘弁な!!
焦って玄関に目線を落とせば、なんや見た事ある靴。ちゅーか下駄。鉄製の。
しかも犯人やったらほぼ有り得んやろう並べ方。右と左が仲良う揃っとる。
空き巣やない事は分かっても、結局焦って一つしかない部屋へ向かった(8畳一間で何が悪い。風呂あるだけでも上等や)
「千歳!」
「ん、おかえりオサムちゃん」
呼んだ反動で吸った息から鼻へ入りこんだ噎せ返りそうなトマトケチャップの匂い。
まさか。
「おま、何やってんねや!」
「今日も遅くなると思ったばいね、ハンバーグば作っとったとよ」
にっこり笑って、チーズ乗っける派ー?て聞いてきた。あ、頼むわ。
「ってそうやなくて!」
「おっ!それ“ノリツッコミ”っちゅーんたいね!今日、白石と一氏が財前に教えこんどったばい。ばってんえらい嫌がってたとよ」
「あかんな財前…ノリツッコミは関西ギャグの基本やのに。って話脱線しとるやんけ!」
あかん。
こいつのペースに乗せられんな、俺。
「まあ、待てや。自分、何でおんねん」
「鍵が植木鉢のしt」
「いやいやいや言わんでええ!!そうやなくて、理由!」
んー…と斜め上を見てから、にへらと笑って向き直った。…照れ笑いっぽい…?
「会いたかったばい」
「…それだけ?」
「それだけ。3週間ぶりたいよ?俺よう耐えたばいね」
確かに、3週間前は俺の腰を砕いた罰で。2週間前は千歳のレポート提出で。先週は俺のテストとノートの採点で。
…そんなに経っとったんやな。
「…寂しかったとよ」
一応台所扱いの場所から、ぺたぺたと来て、俺の前で立ち止まって、視界の両脇にベージュが見えたと思たら、真っ黒になった。
「オサムちゃんは平気やったと?」
「平気、なわけあらへんやん。けど、年取ったおっちゃんはな、時間の流れを早よ感じんねや。それに、結構忙しいねんで?オサムちゃんアイドルやから」
はは、と珍しく千歳が力無く笑った。
お前どんだけ寂しがりやねんとか、そんな溜まっとったんか飢えとったんかとか、こいつがもっとマシな笑い方が出来るようにする方法が後になってからしか浮かばんかった。
ただそん時は、一方的やった腕をこっちからも回したる。それぐらいしかとっさには出来んかった。
「…まあ、邪魔せん程度やったらこれから来てもええで」
「オサムちゃん…!!愛しとぉよ…ん、」
「んんぅ…!は…っ、急になにすんねんド阿呆!!」
盛んな盛んなこの大型動物!ちったあ、くったくたになった体をいたわれ!
―――っていうか、なんや、
「…焦げ臭ない?」
「あ」
コンロから黒い煙。
「おま、火消してから移動せえや!」
「あ、あー…すまんばい」
赤かったソースは、すっかり黒混じりになってもうた。
---デミグラスソースの空間で---
(…今夜なんもせえへんからな。ちゅーか食うたら帰れ)
(!! 酷かっ!)
(おああ俺の牛肉様があああ)
(あれ、?)
カーテン越の薄い朝日の中、疲れきってうつ伏せたオサムちゃんの髪をサラサラと撫でたり弄るのが好きで今日もそうしていたら、ふと違和感。
いつもは肩口にまで届きそうだった髪がすっかり離れてしまってる。
「オサムちゃん、髪切ったと?」
「おー…夏やしな。昨日切った。…ちゅーか今まで気付かんかったんかい」
そりゃまあ夕べはそんな事気にする余裕なんてなかったし。昼間は帽子被ってるし。仕方ないよ。
「5cm…。切ったばいね」
「……自分、もっとマシな事に才気使えや阿呆」
ちょっと長さについて本気出して考えてみたらあっさり切り捨てられた。
「ばってんオサムちゃんの事もっと沢山知りたかよ。俺にとっては“マシな事”たい」
至極真面目に言ったのにコツリと頭を小突かれた。地味に痛か。
「…大人をあんまからかうもんちゃうで」
ふと見えた赤い耳。
思わず顔がほころんだ。
--才能の有効活用--
(そんな赤い耳して言うても説得力なかよ?)(うっさい!)
原稿頑張ってる(?)私に相方が送ってくれたチトオサ×3です。
もー大好き。相方もチトオサも←
また期待してるね!(殴